蕎麦カネイ
一軒 東京・西荻窪 2026-10-31 蕎麦カネイ

この店は何か
中学生のときに食べた一皿のそばがきを忘れられなかった、元ロックミュージシャンの店である。
店主の池田暁史は西荻窪の生まれで、大学時代からバンドでギターとベースを弾き、二つのバンドでメジャーデビューした。音楽の道をあきらめたあと、生涯の仕事として選んだのが蕎麦屋だった。
店を開く前に、池田はJR中央線の沿線にある二つの店で修業した(修業先は確認中)。2021年3月28日、生まれ育った西荻窪の路地に、蕎麦カネイを開いた。
この店にしかないもの
ざると、平日十食の在来
店は自らを「店内石臼碾き手打ち蕎麦」と名乗っている。蕎麦の実は、店の中の石臼で挽く。
基本のざるは、秋田と群馬の生産者から届く蕎麦の実を、甘皮ごと粗く挽いて打つとされる(★紹介記事による、2024年)。紹介記事の中には、切り幅がかなり細いと書いたものもあるが、訪れた日の蕎麦は中太だった。
ざるは、折敷にのって出てくる。つゆは白い片口に入れて別に添えられ、猪口の中には薬味の山葵と刻んだ葱が置かれている。
平日には、もう一枚がある。品書きに「平日十食限定 在来種」とある蕎麦である。蕎麦の実は時季によって変わり、訪れた日は「みよし産令和8年夏そば」と書いた札が貼られていた。紹介記事や訪問記には、奥出雲の在来種「猿政小そば」(2021年)や、岡山の「蒜山在来」(2023年)の名前も残っている。
もり汁は、火入れをしない「生がえし」で作るとされる(★紹介記事による、2021年)。
冷たい蕎麦の品書きは、ざる、とろろ、鴨ざる、かき揚げ天ざる、納豆、辛味おろし、冷やかけ、そして在来種。蕎麦だけをもう一枚頼める「おかわり」もある。太さの違う田舎蕎麦は、品書きにない。
鍋で練る、そばがき
品書きには、そばがきがある。鍋で力強く練り上げ、もっちりとした食感に仕上げるという(★紹介記事による、2021年)。
この一皿が、店主の原点とつながっている(「どこから来たか」を参照)。
蕎麦前と、温かい蕎麦
酒肴は、蕎麦味噌(ごぼうを合わせる)や板わさといった江戸前の定番に、季節の小鉢を添える。半熟のうずらの卵を麹味噌に漬けた「うずら卵の味噌漬け」、日替わりの「本日の白あえ」、湯引きした鴨皮を茗荷とポン酢で和えた「鴨皮茗荷ポン酢」、わさび芋、砂肝のやわらか煮、焼き海苔、玉子焼き、鴨の炭火焼きなど。そばがきも、酒肴の品書きに並んでいる。日本酒は常に5種類ほどを置き、季節の瓶も入れ替える。
店は昼から夜まで中休みを取らずに開けていて、蕎麦が無くなれば閉める。昼から蕎麦前で一献、という使い方ができる。
温かい蕎麦は、かけ、卵黄を添えた釜揚げ、山かけ、玉子とじ、カレー、花巻、鴨南、天ぷら。花巻の海苔は、何種類も試したうえで、この汁と蕎麦に最も合うとして選んだ、大田区の金原海苔店の焼き海苔だという(★紹介記事による、2026年10月)。カレーは、餡をかけた蕎麦である。
品書きには、季節の蕎麦の札が貼り足される。夏の「塩夏蜜柑じゅんさい」が終わると、秋は「きのこたっぷりコロッケそば」に替わる。訪れた日は、コロッケそばと「鶏じゅんさいそば」の札が貼られていた。
天ぷらは、かき揚げを冷たい蕎麦に添えた「かき揚げ天ざる」がある。訪れた日のかき揚げは海老と青菜で、藍の染付の小皿に盛った塩と、黒い椀に入った天つゆの両方が添えられていた。蕎麦湯は、やかんで出てくる。
中華蕎麦カネイの日
日によって、店は「中華蕎麦カネイ」としてラーメンを出す。その日取りは店のXで前もって知らせていて、2026年10月は6日と20日だった。店が連休を取るときは、中華蕎麦カネイも休みになる。
店を開くとき、池田が最初に考えたのはラーメン店だった(「どこから来たか」を参照)。
靴を脱いで上がる店
店は、もとはカフェだった建物を、できるだけそのまま使っている。そこに折敷などの小物を置いて、蕎麦屋に寄せたという。蕎麦も、その折敷にのせて出す。入口で靴を脱いで上がる。窓に面したカウンター席がある。
店の外には品書きが貼られていて、開店の11時半を待つあいだに読める。
店を切り盛りするのは、池田と妻の由香の二人である。予約は受けていない。
どこから来たか
ステージから
池田は大学時代からロックバンドで活動し、アメリカの著名なミュージシャンのプロデュースを受けたこともある。二つのバンドでメジャーデビューした。
その後は、さまざまな仕事をしながらインディーズで音楽を続けた。本人は当時を「全く鳴かず飛ばずだった」と振り返っている。
ラーメンではなく、蕎麦を
音楽をあきらめて店を開くと決めたとき、最初に考えたのはラーメン店だった。妻が興味を示さなかったこともあり、蕎麦屋にしたという。蕎麦はもともと好きだった。
けれども、いちばん大きかったのは、中学生のときに食べたそばがきの味が忘れられなかったことだ、と池田は話している。
長野の「ふじおか」
中学生のとき、両親の知人に連れられて、長野の名店「蕎麦 ふじおか」に行った。そこで食べたそばがきは、もちっとしていて、蕎麦の風味がとても強かったという(本人の話)。
ふじおかは、長野市の山あいにある完全予約制の店である。池田は店を開いてからもふじおかを訪ねていて、店の発信の中で、ふじおかを「店主にとってそばの原点のようなお店」と書いている。
中央線の、二つの店で
池田は、店を開く前に二つの店で修業した。どちらも、カネイと同じJR中央線の沿線にある名の知れた店だとされる。店名は確認中である。
修業先の一つでは、入ってすぐに蕎麦を打たせる教え方だった。打つのが遅いと親方に急かされ、慌てて蕎麦切り包丁で指先を切ることもあった、と池田は話している(★どちらの店のことかは書かれていない)。
地元の町で
店を西荻窪に開いたのは、池田にとって地元であり、妻が上京して最初に住んだ町でもあったからだという。
近い図鑑
池田暁史 … 蕎麦カネイ(西荻窪、2021年)
├─ 修業:中央線沿線の二軒(確認中)
┆ 原点(中学生のときに食べたそばがき)
蕎麦 ふじおか(長野)
池田の修業先は、いま確かめている。分かりしだい、この節を書き直す。
食べた記録
土曜日の11時15分に到着。 お店の外にお品書きが貼ってあるので読みながら待ちます。 30分に開店。お待ちはもう一組。 靴を脱いで上がります。窓側のカウンター席に着席。
鴨皮茗荷ポン酢とかき揚げ天ざるを注文。 多くの蕎麦前や期間限定のコロッケそばにも惹かれるが今回はこの注文。 平日の十食限定の在来種せいろも次の機会に。今のお品書きにはみよし産令和8年夏そばと書かれていました。 店主が茗荷を切っているであろう音が聞こえます。 鴨皮茗荷ポン酢は、鴨脂とシャキシャキした茗荷の爽やかさと、ポン酢の酸味がバランス良く。 とても美味しい。これは必注の一品です。 ポン酢は蕎麦のカエシと柑橘系のお味です。 あっという間に完食。
心地よいバイオリンの調べが静かに流れる中 他のお客さんは蕎麦前と冷酒を楽しんでいる。 お店の作りから、調理の音が聞こえるのも調味料。 天ぷらのパチパチと揚がる音が期待を高めます。
かき揚げ天ざるが到着。 蕎麦は中太。(事前情報ではかなり細いというコメントもあったのですが) もぐもぐタイプです。 まずは蕎麦のみ。その後塩をつけて。 続いてつゆにつけて。この蕎麦はつゆとの相性が抜群。 というかこのつゆが美味しい。火入れをしない「生がえし」で作っているからか、 あまり経験の無い味のつゆ、癖になります。
天種はかき揚げのみ。春菊?と海老のかき揚げは塩と天つゆがついてきます。 こちらは塩と一緒に食べるのが美味しい。海老もプリプリで良い。 次は薬味の山葵をつけてつゆで蕎麦を手繰る。 やっぱりこのつゆが好き。このそばの太さにはこのつゆの味が合う。 七割くらいつゆに浸して啜ります。 かき揚げを塩で、蕎麦を山葵とつゆでの往復がいい。 どちらもボリュームもあります。
やかんで出してくれる蕎麦湯はあっさり派。(最初の客だからかもしれません。) つゆが美味しいので蕎麦湯で割っても勿論美味しい。 量もたっぷりあるので最後に天つゆも割って飲む。
心もお腹も満足してお会計。 帰りに鞍馬を覗くと完全に工事中。再開されたら必ず訪れようと誓い、西荻窪の改札へ。 家の近くにあったら日常使いしたい一軒です。
出典・確認状況
参考にした資料
- 蕎麦カネイ 公式X(@sobakanei)・公式Instagram(@sobakanei)のプロフィールと投稿
- 赤星探偵団「西荻窪『蕎麦カネイ』だから蕎麦屋で一献って、ステキなのです」
- Fujisan Trends「ロックミュージシャンから蕎麦打ちの店主へ…西荻窪『蕎麦カネイ』」(雑誌『蕎麦春秋』の紹介、2024年)
- 日廣薬品 公式note「修行先でニッコーバンに出会いました│ 西荻窪で蕎麦屋カネイを営む池田さん」(2025年4月)
- おとなの週末Web「オープンしたての実力派蕎麦店5選!味、腕ともに文句なし」(2021年)
- おとなの週末Web「土足厳禁!『蕎麦カネイ』『ただいま』と言いたくなる空間で心がととのう」(2024年)
- おとなの週末Web 画像ギャラリー「『おとなの週末』編集部4名の“My BEST蕎麦前”」「カレー×蕎麦の意外な組み合わせ!個性派蕎麦」
- おとなの週末(Yahoo!ニュース配信)「ライターが取材歴22年で選んだ『未来に遺したいひと皿』」(2026年10月)
- locoplace・首都圏walker「蕎麦カネイ 2021年3月28日オープン」
- Retty・食べログ「蕎麦カネイ」の口コミ、訪問記のブログ
- 食べログ「蕎麦 ふじおか」の店舗情報
確度
| 事項 | 確度 |
|---|---|
| 「店内石臼碾き手打ち蕎麦」、11:30〜20:00の通し営業・売切仕舞、定休日は水曜と第2・4火曜、予約不可 | 確定(公式X)。開店11時半は実訪でも確認 |
| 2021年3月28日開店 | 確定(開店情報) |
| 池田暁史が西荻窪出身、大学時代からロックバンドでギター・ベース、二つのバンドでメジャーデビュー、米国の著名ミュージシャンのプロデュースを受けた | 確定(赤星探偵団) |
| インディーズで続けたが「全く鳴かず飛ばずだった」、最初はラーメン店を考え妻が興味を示さなかった | 確定(本人の話、Fujisan Trends) |
| 中学生のとき両親の知人に連れられ、長野のふじおかでそばがきを食べた。その味が忘れられなかったことが蕎麦屋を選んだいちばんの理由 | 確定(本人の話、赤星探偵団・Fujisan Trends) |
| ふじおかを「店主にとってそばの原点のようなお店」と書いている | 確定(公式X)。★投稿日は未確認 |
| ふじおかが長野市上ヶ屋の完全予約制の店 | 通説(食べログ) |
| 開店前に二か所で修業した | 確定(本人の話、日廣薬品 note) |
| 二軒とも中央線沿線の名の知れた店 | 確定(Fujisan Trends) |
| 修業先 | ★確認中。口コミ・訪問記では鞍馬とされてきたが、店主をよく知る方から「修業先は別の店で、鞍馬の吹田さんにはつゆについて少し教わった程度」との指摘(2026年11月)。本人に確認する |
| 修業先で、すぐに蕎麦を打たせる教え方、急かされて包丁で指を切ることがあった | 確定(本人の話、日廣薬品 note)。どちらの店かは不明 |
| 西荻窪に開いたのは地元で、妻が上京して住んだ町だったから | 確定(本人の話、日廣薬品 note) |
| 夫妻(池田暁史・由香)で営む、元カフェの居抜き、折敷などで蕎麦屋に寄せた | 確定(赤星探偵団) |
| 靴を脱いで上がる | 確定(おとなの週末Web、2024年) |
| ざるが秋田・群馬の生産者の実を甘皮ごと粗挽き | 確定(おとなの週末Web、2024年ごろ)。★今の品書きで確かめる |
| 紹介記事に切り幅がかなり細いとあるが、訪れた日の蕎麦は中太 | 実訪(2026年10月31日)。記事の記述は Fujisan Trends の記者の見立て |
| 薬味に山葵と刻んだ葱、猪口の中に置かれる。つゆは白い片口で別に出る | 実見(訪問時の写真) |
| ざるの一式が折敷にのって出る | 実見(訪問時の写真)。折敷を使うことは赤星探偵団にもある |
| 品書きに「平日十食限定 在来種」、訪問日は「みよし産令和8年夏そば」の札 | 確定(おとなの週末Web、Fujisan Trends)/実見(品書き、2026年10月31日) |
| 冷たい蕎麦(ざる・とろろ・鴨ざる・かき揚げ天ざる・おかわり・納豆・辛味おろし・冷やかけ・在来種)、温かい蕎麦(かけ・釜揚げ卵黄・山かけ・玉子とじ・カレー・花巻・鴨南・天ぷら)、季節の札(コロッケそば・鶏じゅんさいそば) | 実見(品書き、2026年10月31日) |
| 酒肴(梅干・蕎麦味噌・お新香・鴨皮茗荷ポン酢・本日のおひたし・本日の白あえ・うずら卵の味噌漬け・わさび芋・上板わさ・焼き海苔・砂肝のやわらか煮・玉子焼き・蕎麦がき・天種・鴨炭火焼き) | 実見(品書き、同上) |
| 在来種の例:奥出雲の猿政小そば(2021年)、蒜山在来(2023年) | 確定(おとなの週末Web)/通説(食べログの口コミ) |
| もり汁が火入れしない生がえし | 確定(おとなの週末Web、2021年)。★今も同じかは未確認 |
| そばがきを鍋で練り上げる | 確定(おとなの週末Web、2021年) |
| 酒肴(蕎麦味噌・板わさ・うずら卵の味噌漬け・本日の白あえ・鴨皮茗荷ポン酢・鴨炭火焼き)、日本酒が常時5種類と季節の瓶 | 確定(おとなの週末Web、2021〜2025年) |
| 花巻の海苔が金原海苔店の焼き海苔 | 確定(おとなの週末、2026年10月) |
| カレー蕎麦(餡)、冷かけ | 確定(おとなの週末Web 2025年1月号)/通説(訪問記、2024年) |
| 期間限定のコロッケそば。秋の「きのこたっぷりコロッケそば」、夏の「塩夏蜜柑じゅんさい」 | 実見(品書き、2026年10月31日)/確定(公式X、2026年10月) |
| 日によって「中華蕎麦カネイ」としてラーメンを出す。2026年10月は6日と20日、店の連休中は休み | 確定(公式X、2026年9〜10月)。★投稿の年は表示からの判断 |
| かき揚げ天ざる。かき揚げは海老と青菜、塩と天つゆが添えられる | 実訪(同上)。★青菜の種類は未確認 |
| 塩は藍の染付の小皿、天つゆは黒い椀 | 実見(訪問時の写真)。★黒い椀が天つゆであることは写真からの判断 |
| 蕎麦湯はやかんで出る | 実訪(同上) |
| 店の外に品書きが貼られている、開店は11時半、窓に面したカウンター席 | 実見(同上) |
| カネイの品書きに太い田舎蕎麦がなく、二枚はざると在来種 | 実見(品書き、2026年10月31日) |
| 蕎麦カネイでの実食 | 2026年10月31日 |
改訂の記録
- 2026年11月 読者の方からご指摘をいただき、店主の修業先についての記述を直しました。修業先は、店主に確かめたうえで改めて書きます。